別冊キラン|インド・パキスタンを歩く 田島伸二









































実りを感じるアジアの旅

2009年の3月から6月にかけて、中国、インド、パキスタンを巡った。これまでに播いた多くの種が実りつつあるのを感じた。

中国では南京師範大学、インドはシャクティセンターとの共催、パキスタンの国立ラホール女子大学での絵地図分析の成果がこれで形になってきた。今後はこれを基に日本で本格的な展開を行う予定だ。

日本を5月10日に出発してから連日猛烈な忙しさ、あっという間に23日までに、インドの最南端のタミールナドゥー州でワークショップなどを終えました。

インドは5月15日から23日まで、タミールナドゥー州のDindigulというところで約250名のダリット(アンタッチャブルと呼ばれる最下層の子どもたち)を対象にワークキャンプを行った。

8歳ぐらいから16歳ぐらいの子どもたちですが、このワークショップを共同で主催したキリスト教関係のシャクティセンターの修道女たちとICLCは共同で、ワークショップを行い、そのうち約70名を対象に、私と黒川氏は絵地図分析や創作ワークショップ、紙芝居、ストーリーテリングなどを行ったのです。これは4日間も続きました。こうした長い期間、直接子どもたちと接したのは、私には初めてのことでした。

これに対してどのような反応が子どもたちからあったか? これは大変おもしろくいい経験になりました。何度思い返しても、無上に面白かった。子どもたちは、生きる喜びを見つけるのに必死ですからね。

また日本の紙芝居がもっている課題も深刻に感じました。ここではこれらの子どもたちにそれぞれ課題を出して、それについて自由に物語を作り、発表してもらったのですが、なんという素晴らしい創造性や底抜けの明るさを持っているのか、毎日多くのことを彼らから学びました。いろいろなこともわかりました。彼らの心理面が浮かび上がってくる絵地図分析では、彼らが村で、直面している深刻な課題を自由に書いてもらったのですが、なんと驚いたこと約2割の子どもの父親や母親が、HIVエイズで死亡している事実でした。そして参加した2割の子どもたちもエイズの陽性にあるということでした。


村の中でも徹底して差別を受ける子どもたちが、こうしたキャンプの中でいかなる作品を作り、こうした結果をどのようにシスターたちが多くの困難な状況に直面しながらも、希望を作り出す努力を続けているか、これをどのように評価しフォローしているのか、その真摯な取り組みにも驚きました。

またインドのカースト制度の現実は、少しずつ変化しながらも、社会の中に強固にいき続けている事実でした。それは上位カーストとダリットたちとの村での暮らしを見れば、一目瞭然です。

日本の紙芝居や絵本が、彼らにどのような評価を受けたか、とにかく多くの発見と感動続きのワークショップでした。それは帰国してから詳細にお伝えしましょう。

そして5月23日には、空路パキスタンのラホールに到着しました。空港には大学の車が出迎え、外国人用の宿舎に寝泊りしながら、国立ラホール女子大学で絵地図分析によるワークショップを環境科学部で開催しましたが、ようやく昨日それが終わってホットとしたところです。じつに刺激的なおもしろいワークショップでした。

現地の視察では、汚染されたフデアラ河の上流を上って、インドとの国境約1キロまで近づいたことです。毎日、詳しく報告したいと思いながら、疲れの中で、今の状況をどのように説明したらいいか考えていたのですが、とにかくこれらのことだけでも1冊の本が書けそうです。

今回の大学で行った絵地図分析の主要な議題は「インドから流れてくる汚染のフデアラ川の工業排水による汚染をどのようにインド側と協力しながら解決するか」というもので、これはカシミール問題以上に難しい課題ですね。しかし、この汚染された川の水を飲む数万頭の水牛のミルクがラホールに配られ乳幼児や妊婦たちにも配られているのです。

これについて5つのグループに分かれて、原因や対策などの絵地図を作成したのですが、2つのグループのひとつは、この問題の意味するものについて10名の教授たちによって、3つはその具体的な解決法について学生によるものでした。できあがった5枚の絵地図は、これからの世界に大きいな意味をもたらす絵地図だった。これは来年にはこの河川の近くに住むインドの学生や教師たちが引き継ぐ予定である。そしてその後は、共同でこの行動のための絵地図を作製することが予定されている。

5月27日は、環境科学部の主だった教授たちが集まった会合で話をするように求められ、約30分ほど話し終えて質問を受けていたとき、突然大きな爆発音とともに窓ガラスや机が震えたのです。

学部長が「自爆テロです!」と叫んで戸口を出て行くと、今回の招致を行ったアテック教授が「ここにいて下さい。外の様子を見て来ますから」と言って出て行きましたが、教授会も騒然とした雰囲気。外ではサイレンが鳴り、この大学は女子大なので、ほとんどが女性の教授たちで、かなりの教授たちはワークショップで顔見知りでしたがみんな蒼白、タリバン系の脅迫によってスワットからの難民が300万人を超えると言われる現実が、キャンパスの中まで迫っているようです。

とにかくパキスタンがかかえている状況は深刻なものです。 結局判明したことは、ラホールの警察署が自爆襲撃を受けて、約30名の警官や市民が殺され、200名以上が負傷したそうです。その地点は約1キロぐらい、これによって今日の午後の内務省での会合などはすべて、キャンセルとなりました。

これからは大変なことが予想されます。それはパキスタンがイラクが抱えていると同じように深刻な状況になるということですね。アフガニスタン、イラク、パキスタンへと戦場が広がっている状況です。こうした状況の中で、ボランティアによる国際協力活動とはなにか?どのようにすべきなのかは大きな深刻な課題ですね。

明日はラホールを出発して、ファイサルバードにある刑務所の中に設置した子どもたちの図書館(キラン図書館)と訪ねる予定です。そしてそのあとはイスラマバードまで車で約5時間かかって、2箇所の図書館を視察してラホール経由で東京へ帰る予定です。

そして6月4日深夜、無事に日本に帰ってきました。今回ばかりは、帰国にホットしましたね。